補習校のあったA市には日本の進学塾がいくつかあり、中学生になると俺も通いはじめた。両親は自分を日本の大学に行かせようと考えていたようで、昔からそう言われていた。だから、「ああ、そうか」という程度に思っていた。でも、塾はため息が出るほど苦痛だった。特に、塾で勉強する国語はおかしかった。ドイツの現地校の国語の授業は文学作品などの文章を読んで、それについて意見を書くなど自分の考えを表現することが求められていた。補習校の国語の授業でも、いろいろな日本の作品に触れながら感想文を書いたり、ディスカッションをしたりしていた。でも、塾では、「次の5つのうち、正しいのはどれですか」という問題に答えるためのトリックを教えられて、それのどこが国語の勉強なのか分からなかった。そんなもん、ただの推理じゃんって思っていた。ぜんぜん創造性とか使わないし、自律的に考えないし。そんなことをやっていい大学に入っても将来いい仕事できねえよって、すごいむかついて…。あれは本当やりたくなかった。だから、塾で試験があっても勉強なんかまったくしなかった。先生には「あなた授業のときはできてるのに、テストの点数悪いのちょっとわからないんだけど」と言われていたが、「ああ、そうですか」と聞き流していた。


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