Story: 10
絵の描き方は、日本語の本のほうがきっともっと理解できる。
まや
中学1年生(インタビュー時)
カナダのケベック州モントリオール郊外在住。4歳頃から5年生まで土曜日に日本語センター(継承語学校)に通っていた。
プロフィール — フランス語、英語、日本語の順番で話せます。
まやさんのプロフィールを簡単に教えてください。
まや:12歳です。中学1年生です。カナダのモントリオールの郊外に住んでいます。母とは日本語をしゃべります。そして、父とはフランス語です。フランス語、英語、日本語の順番で話せます。だって、ここはフランス語が一番使います。学校には日本人が珍しい。
母:日本語を話さないと私と話せなくなるって、ずっと言ってるんです。脅しじゃないですけど、無理に話させるっていうか、もっと日本語を話させなくちゃって。ここはトロントやバンクーバーと比べると、日本人が少ないんです。フランス語圏なので、結婚とかの理由がないと、日本人はなかなか来ないんです。
現地校には日本人が少ないってことですけど、まやさんと同じように家で日本語を話している人はいますか。
まや:会ったことないです。
母:モントリオール市内に行くと、いろんな国の人がいて、日本人もいるみたいです。でも、ここはちょっと郊外なので、周辺に日本人がほとんどいないんです。
日本語センター — おもしろかった。でも、ちょっと漢字は難しい。
最初に日本語センターに行ったのは、何歳ぐらいのときだったんですか。
まや:4歳ぐらい。ひらがなを習ったり、工作をやったり。学芸会とか運動会も。
日本語センターに行って、どうでしたか。
まや:おもしろかった。いろいろ習いました。でも、ちょっと漢字は難しい。たくさんありすぎです。絵は好きですけど、漢字ってちょっとぐちゃぐちゃしてる。みんな似てるし。
日本語センターのお友達は?
まや:みんなリスペクトしてる。先生が見てないときに英語かフランス語をほんのちょっとしゃべるときもあったけど。ほんまに日本語が分からへんときに、英語かフランス語をしゃべりました。
友達と話すとき、フランス語とか英語のほうが言いたいことが気持ちよく言える感じがする?
まや:はい、すごく。フランス語と英語のほうが、もっと使っているからだと思います。日本語はいつもお母さんとは使っているんですけど、その他はあんまり使いません。
日本語センターは5年生でやめたということですけれど。
母:コロナで授業がオンラインになってその後再開したんですけど、日本語センターが借りている校舎にワクチン未接種の人は入っちゃだめっていうきまりで。そのとき未接種で入れなかったので、やめてそのままになってるんです。6年生の最後まで行こうと思ってたので、早く終わってしまって、ちょっと残念ですね。
6年生まで頑張ろうという気持ちがあったんですね。
まや:漢字ができないから、できるようにしたい。そして、もうひとつは日本語を習うためです。
漢字ができたら、どんないいことがあると思いますか。
まや:本がよく読めるようになります。もうちょっと日本語が分かるようになったら、日本語が楽になる。今は知らんから日本に行っておばあちゃんにしゃべるとき、かっこ悪いじゃないけど、そんな感じ。私の年であまりしゃべれないの、「なんでよ」ってなるから。そして、お母さんともうちょっとよくしゃべれるようになる。
母:私とは絶対に日本語しか話さないっていうことになってるんですけども、私の言うことが理解できなかったりとか、言いたいことが日本語で言えなくなったりとか、コミュニケーションがうまくいかないことがあって。
まや:だから英語で言おうとするけど、言い方が分かれへんからフランス語で言おうとしたら、お母さんは、「何、それ。え?ん?」って。
母:うちから日本語がなくならないように、日本語じゃないと答えないって、いつも言ってて。
まや:そう。だから、日本語よくしゃべれなかったとき、お母さんが「こうじゃなくて、こう言うのよ」って、いつも。
さっき、ちょっとおばあちゃんの話をしてたんですけど、日本に会いに行ったりすることもありますか。
まや:はい、毎年。でもコロナで3年ぐらい行けませんでした。今年は母が日本に帰って、おばあちゃんを手伝って、そして温泉にも行きます。私は行かないのに。私はここにお父ちゃんといるから。
母:お父ちゃんって言わないの。
まや:お父さんのことをしゃべってるときに、お父さんに分からないように父ちゃんと言います。昔はパパって言ってたんですけど。
母:お父さんの悪口を言うときに、父ちゃんって言うんです。
お父さんは全然、日本語は話されないんですか。
母:はい、まったく話せません。
まや:忍者、すし、サムライ、しいたけ、あと「痛い」も知ってる。
絵を描いたり物を作ったりするのが好き — 絵の描き方は、日本語の本のほうがきっともっと理解できる。
母:マンガを描いたり、絵を描いたり、本を書いたり、そういうのもしたいって思ってて。日本のマンガの描き方の本を買ったので、それを読みたいっていうのもあって、漢字を覚えたりしたいっていうモチベーションが少し上がってきてるんです。
まや:絵の描き方は、日本語の本のほうがきっともっと理解できる。ちょっと待ってて。すぐ、帰ってくる。
[スケッチブックを取りに行く]
マヤさんが描いたの?すごい上手。
まや:自分で作ったキャラクターです。私の一番好きなのはマンガで、これは自分のアイディアを書いてる。全部フランス語だけど。
たくさんありますね。
母:小さいときから本当に絵が好きで、イマジネーションの絵が多いんです。私のイマジネーションと全然比べものにならない。今は動物の絵が多いんですけど、人間が描きたいって言ってて。日本の本は人間の描き方がたくさん載っているんです。日本のマンガって独特でかわいいし、ここでも人気があるんです。
まや:これも作りました。ベースは骨みたいなの使って、毛をつけて塗ったり、のりでくっつけたり。あとプラスチックも入ってます。
母:勉強はしないけど、こういうことはすごい。
日本語センターに行かなくなってから、漢字が読めるように勉強したりしてるんですか。
まや:うーん。
母:してない。
まや:ごめん、ちょっと絵描きたいかな。
将来のこと — 絵を描いたり、できたら獣医さんになりたい。
将来はどんな仕事がしたいんですか。
まや:絵を描いたり、自分で本を書いたり。あと、できたら獣医さんになりたい。動物が好きやから。
母:ずっと獣医さんになりたかったんです。住んでるところが田舎で、今は鶏とかラットも飼っています。
まや:小豆ちゃん。ちょっと小さい尻尾です。
日本語の名前なんですね。
まや:お母さんネズミが、サクラ。ナミもいます。サクラとナミはアニメから名前を取りました。サクラは『NARUTO』で出てくるキャラクターで、ナミは『ONE PIECE』で出てくるキャラクターです。
母:馬も好きで、馬の人形をいっぱい集めてます。うちではなかなか飼えないんですけど、近所に馬を持ってる方がたくさんいるんです。
そうなんですか。そちらはおうちも広いんですね。
母:モントリオールの町から20キロぐらい離れています。大豆畑の大平原で、向こうから太陽が上がってくるような所です。
モントリオールから20キロも離れてたら、毎週日本語センターに行くのも大変だったんじゃないですか。
母:冬は雪で道路も凍りついてるし、毎週片道1時間以上かかってました。やめてしまって、実はちょっと楽になりました。
毎週お母様が送っていかれてたんですか。
母:はい。頑張って、送っていました。お父さん、全然一緒に行ってくれないですね。だから、日本語を学ぼうという、その今までの苦労がなんとか報われたら、と思っています。
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